千里眼事件―科学とオカルトの明治日本 (平凡社新書)



千里眼事件―科学とオカルトの明治日本 (平凡社新書)
千里眼事件―科学とオカルトの明治日本 (平凡社新書)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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貞子の史実

 映画「リング」などでもモチーフになっていた,科学者による超能力実験。本書は,史実としての御船千鶴子,長尾郁子の実験の様子を丹念に描写した力作。
 明治43年から44年にかけて,相次いで「千里眼」の能力を持つ者が出現し,東京帝大の福来友吉助教授,京都帝大の今村新吉教授らが実験を行った。山川健次郎ら東京帝大の諸教授列席のもと実験は繰り返され,好成績を挙げた回もあった一方で,全く当たらなかったり,千鶴子が試験物をすり替えたりという回もあった。いずれにせよ,作為の余地をなくすような実験の提案には千鶴子らが応じなかった(疑いの目で見られると能力を発揮できないという)ので,超能力の科学的な証明に成功したとはいえなかった。
 福来は,その後も超能力の存在を信じて研究を続け,最後には「人間の霊魂は宇宙の太霊とつながりて,結局一如である」と書くほどに心霊主義への傾倒を強めた。
 他の教授らには確信できなかった「千里眼」を,福来は確信していたのである。

≪学者の欲望。それはなにも,世界的な評価を受けたいとか,歴史に名を刻みたいとか,自分の発見・発明によって利益を受けたいといったものとは限らない。それ以上に,自分が望んだような実験結果を得たい,自分の仮説を証明する真実に出会いたいという願望こそが,学者に冷静な判断を失わせることになりがちであることを,われわれは知らなければならない。≫(49頁)


知的興味の持ち方

 透視などの超能力を信じるか?という問いに対して、私はどちらとも言えない。というのは、そんな力があったらいいなぁと思う自分もいるし、そんな力はありえなくて、何らかのトリックを使っているのだろう、と思う自分もいるからだ。
 ただし、信じる気持ちと信じない気持ちのどちらが強いか?と問われれば、
私は信じる気持ちと答える。これは私が超能力に対して抱いている漠然とした期待感が、そのアドバンテージとなっていると思う。
 そんな私に、この本がまず与えてくれたものは、この問題に、よりフェアで冷静な目線で取り組むための材料だ。
 超能力に限らずだが、自分の能力を偽ることで大きな存在になる「偽者」がいて、その「偽者」に不特定多数の人々が大きな期待をして飛びつくといったことは今も昔も変わらない。そして、「偽者」に飛びついた人々の多くは悲劇に見舞われる。現在起こっているあの事件やあの事件のように。
 例え、千里眼が「偽」であったとしても、それがかなりの人々から期待感を持って信じられ、新聞の一面を飾り、時代を動かす大事件になったことは紛れも無い事実だ。
 この本から私は、千里眼事件は単に信じるか信じないかの問題では無く、当時の社会を映し出すような奥行きのある問題だということを教えてもらった。
 また、そういった興味の持ち方を持ってしまえば、信じる信じないはどうでもよくなり、むしろ社会的問題として捉えることに重点が移るようになる。
 そのような視点を持つことは、何かに期待しすぎたり、現代の「偽者」にダマされたりしないためにも重要であるということをこの本は教えてくれたと思う。

 

科学的とか明治とか日本とか

本のサブタイトルが科学とオカルトの明治日本とありますが,
本の主題にかかわるのは科学と明治と日本で,オカルトは題材でしかありません。
オカルトが主題になる書物だと
「高低」と「否定」が論じられますが,この本では一切,御船千鶴子と長尾郁子の能力の真実性には触れられません。
丹念に
報道がどうであったのか,
学者達はどのような態度だったのか,
人々はどのように反応したのか
を時系列に沿い,追うだけです。

終いにまとめられた明治末期の「科学」の揺らぎ
はすばらしい
「知識は驕りやすく経験は騙されやすい」
ことの例示です。

あーーおもしろかった。
俯瞰図が手に入る

私は当初この事件についての詳細を知らなかったので、とても興味深く読みました。

明治後半、御船千鶴子・長山郁子という2人の「千里眼」の持ち主が現れる。
その能力にとても興味を示した人物、福来友吉。
「千里眼」に魅了され、数々の実験を行い、それを科学的に証明し、「千里眼」を世間に広めようと、また認めさせようとした福来。

結局「千里眼」能力者である両人の死によって、真相は闇の中に―。

この本ではそのような全体的な俯瞰図が手に入るように思います。
心霊学研究の先行者として一柳廣孝さんの本も同様に読むとよりわかりやすいと思います。


著者の面目躍如

このネタでこの著者で面白くないわけがないと思い購入しましたが、全く期待を裏切らない本でした。
明治末期、「千里眼」を持つとか「念写」ができるという人が現れ、マスコミが取り上げる騒ぎとなる。そして、アカデミズムがそれに対して公開実験を行うと。
その時に、アカデミズムやマスコミが「千里眼」に対して果たした役割を見、また、この21世紀に「霊能者」たちにマスコミが与えている機能を考えた時、このことは決して過去のことではなく、今も現実に行われていると思うべきだと思いました。まるで現在の写し絵を見ているようでした。

いわゆる似非科学とアカデミズムの問題に関しては、「常温核融合スキャンダル―迷走科学の顛末 」を併読することをお勧めします。



平凡社
透視も念写も事実である ――福来友吉と千里眼事件
奇想科学の冒険―近代日本を騒がせた夢想家たち (平凡社新書)
UFOとポストモダン (平凡社新書)
日本の偽書 (文春新書)
捏造の世界史 (祥伝社黄金文庫)




千利休とその妻たち〈上〉 (新潮文庫)

千利休―己れの美学に殉じた男 (PHP文庫)

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千両花―いろは双六屋 (徳間文庫)

占領と平和―“戦後”という経験

宣教師ニコライと明治日本 (岩波新書)

戦うハプスブルク家―近代の序章としての三十年戦争 (講談社現代新書)

戦艦「比叡」―高速戦艦悲劇の生涯 (光人社NF文庫)

戦艦大和 最後の乗組員の遺言

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